設立趣旨書 

1  趣 旨

戦後の高度経済成長期を経て「安全・安心・効率」の価値観が敷衍化した70年目の今日、人々は物の豊かさから心の豊かさを深く求め始めている。

人間が成長し自立していく基礎になるものは、人間が本来持っている「感性」を育てること、といわれる。その感性を受け止める人間の器官として五感というものがある。物が豊かになる一方で、子どもから大人に至るまで人間に備わっている五感(視・聴・嗅・味・触)で感じる機会をも喪失させつつある。自分の目で日の出を見たことのない小学生が半分以上、生まれたときから情報機器の音に慣らされ、春の音も親との会話の声すらなく、『春風や闘志いだきて丘に立つ(高浜虚子)』と詠われる春のにおいを嗅ぐ場を持つことすら難しい時代を迎えている。山菜を取って食べたことのある小学生は長野県でも半分以下、化学調味料に慣らされた舌では受け入れられなくなっている。桜の花はめでるが桜の木のぬくもりを手で触って感じたりすることはあまりしない。物が豊かになり、「安全・安心・効率」の価値観が先行すればするほど、人間の五感を使う場が失われ、結果として感性を磨く機会失ってきている。自分の体に備わった五感で感じる機会が少ないということは、自分を生命体として感じられなくなってきているということでもある。

物が豊かでなかった江戸時代は「自然界に無駄はない」という考え方の下に、「循環(めぐること)」の価値観をもち、エネルギー、水、資源、食糧、人口など多くを克服することに成功した、という。これらの難題に取り組みながら、環境を大切にし、廃棄物を出さず、満足のいく食事を楽しみ、経済的に活気のある社会を築き上げていたという。『日本にはかって「自前で生きる」という言葉があり、多くの人と関わり助け合いながら、それでも「自分なり」であることが「自前」なのである』という文言がある。

食もエネルギーも「自前である」ことが「自前で生きていく」ことに繋がり、自他共に自信と誇りが持てる環境、土地柄になっていくことになり、活気ある江戸の社会の姿に重なる。

人間の五感を通して感性をより深く磨くことにより、ものを「見抜く力・気づく力・高める力・広く深く掘り下げる力・つながる力・連想する力・与える力・大事にする力」等を一層培うことができる。それは自立につながり、現代版の「生きる力」そのものになる。

  そこで私たちは、子どもたちには食育教育、環境教育を通して、大人の皆さんには「信州のふるさとの故郷」として、土地のよさを五感を通して再発見してもらい、それらの活動を通して大人から子どもまで五感をフルに使い、いっそう感性を磨くことで自分に自信と誇りを持ち、自分の街がさらに好きになり、地域への愛着を内外に広げることに繋がっていく社会を実現していくことに寄与したいと考えている。

2  申請に至るまでの経過

  その実現のため、農業先進地である中野市の「食」の地産地消環境に併行して、自然再生エネルギーの普及活動による「エネルギー」の地産地消環境を整えることを通して、中野市が将来にわたり「循環型社会の街」になり、その例が全国へつながっていくことに寄与することを目的とする。

上記の目的を達成すべく、組織の基盤を確立し、市民が自分の住む地域の良さを一層感得できる機会を提供することにより、この地に生活する人たちが自他ともに自信を持ってこの地を発信できるためにも、特定非営利活動法人化が必要と考え、ここに特定非営利活動法人信州ふるさと郷育ネットワークを設立するものである。

           特定非営利活動法人 信州ふるさと郷育ネットワーク  役員名簿 

役職名氏  名住所又は居所
理 事 長佐藤 榮美長野県長野市大字徳間1168番地27
副理事長柴垣 顯郎長野県中野市大字柳沢614番地
副理事長小林 日出夫長野県中野市大字豊津696番地1
監  事    寺島 正友    長野県中野市大字立ヶ花732番地3